山本たかしの政務調査ニュース

「歳出改革」を前面に出した『財政ビジョン』

 横浜市の財政運営の基本方針『財政ビジョン』の議論がはじまりました。
 財政ビジョンは、『横浜市では、人口減少や高齢化の進展等により、今後、市税収入の減少や社会保障経費の増加が見込まれ、財政状況は将来に向けてますます厳しさを増していきます。また、近年では、地震や台風といった自然災害が増加し、新型コロナウィルス感染症のような新たな脅威も出現しています。地球温暖化による気候変動も、中長期的にみれば市政運営の前提を変えうる中長期的なリスクと考える必要があります。・・・・・・・』の書き出しで始まります。

 横浜市が夢と希望あふれ、安全・安心の市民生活を創る都市として持続的な発展をするために、常に、市政課題(危機感)を市民と共有しつつ、それを未然に防ぐ戦略の策定、施策が必要です。

 第一に、市民自らが自律的、能動的に住み慣れた地域の中で活躍できる「地域力」、「市民力」の醸成です。市民が中心となって、地域活動を充実させていく、まさに市民自治の市政に実現です。第二に、社会変化によって新たに生まれる行政ニーズに対し「事業の選択と集中」、「組織のスクラップ&ビルド」の必要性です。限られた経営資源を活かし、市政を行うことであり、「ばらまき政治」ではなく、優先順位をつけたメリハリのある市政の推進です。そして第三には、市民税に依存している税収構造の転換を図る「戦略による財源確保」です。横浜市では、個人市民税などが市税の60% 占め、安定した税収構造である一方、企業集積による税の恩恵を受けにくい構造となっています。戦略的な政策による新たな税財源の創出が必要です。そして最後には、日本最大の基礎自治体である横浜が自立的都市経営をすすめるための大都市制度「特別自治市」の実現です。

 2065年の横浜市の収支差(歳入―歳出)▲1752億円(中位予測)が予測されます。将来の持続的成長を創るためには、「歳出改革」を前面にうち出した『財政ビジョン』の策定が必要です。
 『債務管理』については、「長期的視点にたった債務管理と戦略的市債発行」、「債務の償還財源の確保」、「中長期的な調達コストの抑制」が重要です。
 また、『財源確保』については、「戦略的・総合的な財源充実策の展開」を行い、「新たな手法による財源の充実」、「税務行政の効率化・高度化の推進と安定的な税収確保」に取り組むとしていますが、「新たな手法」の具体策についての言及はなく、財源確保策には『不透明感』が否めません。

 平成26年制定の「横浜市将来のわたる責任ある財政運営の推進の関する条例」(財政責任条例)は、行政、市民、議会がそれぞれ責任をもち、中期的な財政健全化へ一定の成果を上げましたが、高齢化の進展による社会保障経費の増加や、老朽化した公共インフラの保全更新などの公共投資の経費増大など臨時財源(減債基金)に頼らざるを得ない状況にあります。
 慢性的な税収不足からくる将来の財政破綻の懸念を払拭し、持続的成長を確保するためにも、計画的な歳出改革をすすめる基本方針を示されたことは評価いたします。一方で、『まず、数値(目標)ありき』では、必要とする事業に予算がつかないケースが出てきます。目標を重視するあまり、財政運営の硬直化を招いてはなりません。「木を見て森を見ず」とならないよう、『横浜市財政運営の羅針盤』としての柔軟かつ弾力的な運用が重要です。