山本たかしの政務調査ニュース

総合審査(その3)デジタル改革とグローバル都市経営

 令和4年第1回市会定例会(予算議会)が終わりました。山中市長による初めての予算編成による令和4年度予算案が可決しました。私は、この予算議会で市政の重要課題について質問をしましたので、その質問(総合審査)について、3回に分けてご報告します。

14.DXの推進

 横浜DX戦略に、「防災」はリーディングプロジェクトの一つと位置づけられています。
 磯子消防団第一分団は、昨年から、消防局が進めている消防団員の負担をデジタルで軽減するスマートフォンアプリの実証実験に関わってきました。DXの推進には、現場の視点が欠かせません。現場の負担感、課題を的確に捉え、それを解決する、現場で使いやすいアプリやサービスを作っていく必要があります。実証実験でアプリの仕様検討に取り組み、令和4年度はこれを踏まえた開発を行い、実運用を開始する予定です。
 消防団アプリ開発には、デジタル統括本部が技術面から丁寧に支援しました。デジタル 統括本部は、今年の4月から大幅な体制強化がされ、現在の26名から、職員の純増分だけで24名、総務局からの移管と併せると100名を超える体制になります。
 今回のDX戦略では、「防災」の他、「教育」「子育て」をリーディングプロジェクトとするなど、DXの対象を「行政」だ けに留まらず、「地域」「都市」に及びます。 デジタルに不慣れな現場では、アプリ開発には、ソフトベンダーに頼りがちです。ベンダーをうまく活用できず、思っていたのと違うものが出来上がったり、開発コストがかかりすぎてしまうことも珍しくありません。ソフトベンダーをうまく活用するためには、関係部局をサポートするベンダマネジメントをデジタル統括本部の『デジタル・デザイン室』が責任をもって行うことが重要です。また、DXの推進には利用者である市民の環境整備も必要です。その代表例がマイナンバーカードです。国は、「令和4年度末までにほとんどの住民がマイナンバーカードを保有する」ことを方針としていますが、横浜市の交付率は3月1日現在で46.5% に留まっています。普及に向けた一層の取組が不可欠です。

15.グローバル拠点都市形成

 横浜市は、国の「世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」において、令和2年7月に「グローバル拠点都市」東京コンソーシアムの一員として選定されました。これは、横浜市企業誘致をはじめ、I・TOP横浜やLIP.横浜などオープンイノベーションの取組、関内地区に設置した「YOXO BOX」でのスタートアップ支援の取組が高く評価されたからです。
 コロナ禍の影響により、グローバル拠点都市として海外との交流は思い通りに行かないところがありましたが、令和4年度は、市内のスタートアップの海外展開支援はもとより、海外からスタートアップを呼び込むための情報発信を積極的に進めていくべきと考えます。
 海外のイノベーション創出のエコシステムを見ると、スタートアップからグローバル企業、そして投資家などの集積、スタートアップを輩出する大学とそのOBのコミュニティの存在など、様々な人材が組織や領域を越えて交流する環境および、持続可能な民間主導の推進組織の存在があります。
 横浜でも、昨年、産学公民連携でイノベーション創出を促進する団体、「横浜未来機構」が民間主体で立ち上がりましたが、この機構が、海外の先進的な推進組織と連携することで、国境を越えたイノベーション人材の交流、民間によるグローバルなビジネスを促進していくことができます。自由闊達なスタートアップ環境を構築し、名実ともに「グローバル拠点都市」の形成を目指していくことを期待します。

16.ムンバイ事務所のタイ(バンコク)への移転

 横浜市は、日印ビジネスの勢いを市内経済へ取り込むため、2015年に姉妹都市であるムンバイに海外事務所を設置しました。
 しかし、昨年4月から、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、事務所を一時閉鎖し、4年度予算では、所管地域内である東南アジアのタイ・バンコクへの移転を計上しています。
 東南アジアにはインド以上に日系企業が多く進出していますが、中国も米中経済摩擦により東南アジア諸国との経済協力関係を戦略的に進めている状況です。
 東南アジア諸国のインフラ整備投資に中国主導のアジアインフラ投資銀行が大きな影響を与えます。中国のインフラ、EV ビジネスの脅威は日系企業に良い影響を与えるとは思えません。
 このように東南アジアで市内企業がビジネスを展開する際の競合リスクについて課題が大きいと言わざるを得ません。アジア事務所が、しっかりとした理念、体制、予算を持って、企業・市民に求められる成果を出せるよう取り組むことを要望します。

17.持続可能な水道事業経営

 水道事業は、人口減少に伴う水需要の減少、施設の老朽化、人材不足など、多くの課題に直面していますが、将来にわたり安全な水道水を供給し続けるため、水道局が今後更なる事業の効率化を進めていくには、水道スマートメーターの導入が有効な手段になっていくと思います。通信技術を活用して遠隔からの自動検針を可能とするスマートメーターの導入により、現在は人手で行っている検針業務の効率化はもとより、データの活用により、施設整備や運用の最適化、また、サービスの向上なども期待できます。
 しかし、水道分野では、本市を含め実証実験を行う事業体は徐々に増えてきましたが、導入コストが高く、費用対効果が見込めないため、多くは本格導入にまで至っていないのが実情です。水道局ではこの状況を打開するため、まだ製品の種類が少なく高額なメーターについて、民間事業者と低価格化に向けた共同研究を進めています。
 水道スマートメーターは、標準的な仕様が確立されておらず、各メーカーが独自に開発を行っている状況です。そのような中で、横浜市が共同研究を通じて低価格化を追求する方向性を示すことは、メーカーの競争を促すうえでも重要なことだと考えます。一方、更にコスト低減を図っていくためには、共同研究の成果を反映させたメーターの量産化により、大都市に水道スマートメーターの市場環境を作り出していくことが必要です。水道スマートメーターの市場環境の拡大によって低価格化にを実現させるためには、横浜市水道局ができるだけ多くの水道事業体と連携を強化し、市場形成の促進を牽引していくことが重要です。

18.特別自治市

 市政運営方針の演説や、本定例会での力のこもった答弁から、山中市長が特別自治市の実現に向けて、並々ならぬ決意をもっていることが分かりました。
 特別自治市は県との二重行政を完全に解消し、仕事に見合う税財源を持つことができる制度であり、実現すれば大きな行政改革にもつながります。一方、神奈川県は、「指定都市が主張する必要性自体に合理性がなく、実現した場合、県民生活に大きな影響を与えることから法制度化は妥当ではない」と否定的な見解をだしています。神奈川県が公式の場で、「合理性がない」、「法制度化は妥当でない」などと発言すること自体、大変遺憾ですが、なぜ横浜が特別自治市を目指しているのか、現在の大都市特例事務による市の負担の不公平感や特別自治市の意義やメリットを横浜市民に理解してもらえる絶好の機会です。
 川崎市や相模原市とともに、県内三指定都市が特別自治市実現に向け連携し、特別自治市の意義をプロモートしていくことが望まれます。

19.国際園芸博覧会と旧上瀬谷通信施設のまちづくり

 国際園芸博覧会は国家的プロジェクトとして、今国会に特措法案が提出され、3月10日の衆議院本会議において全会一致で可決されました。これまでの自民党による取組や市会議連による要望など地元横浜市の取組の成果です。国際園芸博覧会まで、いよいよ5年となり、令和4年度は、機運醸成はもとより事業内容の具体化に向けて、非常に重要となる節目の年です。市の総力をあげて取り組むべきであり、園芸博を成功させ、そのレガシーを生かし、まちづくりを進めるべきだと訴えました。

予算議会は、上程された予算案は、すべて可決され、3月23日に閉会しましたが課題も見えてきました。財政運営の厳しさを市民も理解し、『危機感』を共有し共に乗り越えなければなりません。これまで培ってきた『市民力』『地域力』を発揮する時です。