山本たかしの政務調査ニュース
市長に質問!横浜の成長戦略
0月11日に開かれた決算第一、第二特別委員会(連合審査)において、よこはま自民党を代表して、林文子横浜市長に対し、人口減少 時代を迎える横浜の市民生活への影響ならびにリスク、そして持続可能な成長を続ける未来の横浜の成長エンジンについて質問を行い ました。
《林市長への提言》
- 2019年から横浜においても人口減少時代を迎えるが、生産年齢人口の低下、高齢者人口の急増は、市民生活に大きな影響をもたらすことに、強い危機感をもつべきだ。
- 超高齢社会の医療・介護・福祉サービスにかかる社会コストが横浜の財政に大きな負担をもたらすため、あらゆる施策を総動員して歳出の抑制とともに、市債発行に依存しない安定した財源確保策の検討をすべきだ。
- 横浜が持続的成長発展を遂げるための成長エンジンは、「市民力」、「中小企業の技術力・競争力」、「観光・MICE」であり、競争優位性を確保するための重要戦略だ。
- 国内外の都市間競争を勝ち抜くために、魅力ある企業誘致やスタートアップ企業支援を行い、横浜市内の就労ならびに交流人口の拡大を図ることが必要だ。
- MICE戦略の推進には、経済局と国際局が相互に連動した取組を行うとともに、文化観光局は、文化・芸術振興と観光誘客に特化して推進すべきだ。
- 東京オリンピック・パラリンピック以降に懸念される市内経済の停滞を防ぐために、引き続き、積極的な公共事業投資を行うべきだ。
- 2025年には介護人材は8500人不足することが見込まれているため、「地域包括ケアシステム」の実現に、不退転の決意をもって介護人材確保に取り組むべきだ。
- 労働力不足を解消すべく「外国人材」の活用を政府は検討をはじめているが、市民の安全な雇用労働環境と安心の社会福祉が維持できるよう外国人施策の厳正な制度運用を行うべきだ
最新の将来人口推計によると、2030年には総人口は366万人、更に20年後の2050年には335万人と一層の人口減少が進むことが見込まれ、市民生活への影響にしっかりと対応することが必要です。29年度決算では、実質収支の黒字化や市税収入が2年連続増収となり、堅実な決算でした。しかし、生産年齢人口が減少傾向にあり、65歳以上の老年人口は右肩上がりに急ピッチで増えている今、将来の市税収入の伸びは楽観視できません。《今後10年間の市税収入の見通し》《個人市民税の税収の見通し》
横浜市においては個人市民税の市税収入全体に占める割合が30年度で47.6%であり、個人市民税の減収が市税収入総額に影響が大きいといえます。《必要な事業(注)に取り組んでいくための歳出抑制の考え方》
《今後も必要となる事業の予算確保》
事業の執行には、「選択と集中」が必要です。市民に丁寧に説明理解を求めること、そして先送りする事業については、いつまでに実行するのか、明確なコミットメントが必要です。《増加する扶助費の認識と対応》 《新たな財源確保の考え方》市債発行に依存しない安定した財源を様々な手法で幅広く検討していく必要があり、ビジョンと戦略をもって、将来にわたる安定した財源確保に取り組んでいただくことを要望します。
政府は、骨太の方針2018で「外国人材の受入拡大」を表明しました。少子高齢化、人口減少社会にあって、人材不足や社会保障財源の逼迫などに向き合い、就労資格を設けて外国人労働者を受け入れる姿勢を示しました。
2025年に50万人の外国人労働者の受入れをめざし、新たな在留資格、いわゆる「特定技能」を設ける入国管理法改正案を今秋の臨時国会で提出する予定です。
今や労働力不足は諸外国も同様であり、国家間の厳しい競争となっています。横浜市においても、外国人材を活用できる産業や規模を把握し、横浜の成長に繋がる外国人材の確保に取り組む必要があります。《外国人の市民の動向予測》《外国人市民への市民施策の成果》
外国人労働者の受入には、他国でも常識とされている「自国民雇用優先の原則」に沿った、適正な外国人就労管理が必要です。現在でも、「技能実習制度」による労働需給のミスマッチから生まれる外国人と企業側のトラブルやアルバイト目的の偽装留学などが頻発しており、厳格な運用が求められています。《外国人の市民の就労等の実態と課題》「多文化共生」に基づく様々なサービスを行っている横浜市において、今後、市内中小企業が外国人労働者を雇用する場合を想定し、安全安心な経営ができるよう適切な指導助言が必要です。《外国人市民に向けた雇用労働施策の今後の方向性》
人口減少リスクを回避し都市の持続的な成長を確保するには、経済の活力が最も大切です。就労人口や観光客をはじめとした交流人口の拡大が重要です。現在、若者の流入による東京一極集中と若者の流出と過疎化が深刻化する地方市町村に二分化され、大きな社会問題となっています。東京に近傍する横浜も東京との都市間競争にさらされています。《将来の人口減少社会のリスクに対する危機意識》《将来の人口減少社会の経済が牽引する役割と責任》《東京一極集中からの脱却のための就労人口や交流人口の拡大への大胆な取組》
現在2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、様々な公共事業を進めていますが横浜経済の安定した成長を維持するには、2020年以降も積極的な公共事業対策を講じていくべきです。《オリンピック以降の公共事業を中心とする経済活性化の積極的推進》
29年度の健康福祉費の一般会計決算額は約3,239億円となっており、本市の財政状況が依然として厳しい状況においても、前年度から約12億円の増加となっています。《29年度の健康福祉事業に対する評価と課題》
2025年には、本市の高齢者人口は100万人に迫るなど、社会保障費の激増が懸念されます。誰もが安心して、暮らしやすい街を実現することが、全ての市民の望みですが、一方で、厳しい財政状況の中で、全てのニーズにすべからく応えていくことも難しい問題です。《超高齢社会における健康福祉事業予算配分の考え方》
2025年には全国で34万人、神奈川県下で21000人介護人材が不足するといわれています。地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するため、国が、平成26年度に消費税増収分を活用した財政支援制度である「地域医療介護総合確保基金」は各都道府県に設置され、基金の活用によって「効率的かつ質の高い医療提供体制の構築」と「地域包括ケアシステムの構築」に向けた施策が県内全域において展開されています。景気回復を受け、多くの産業企業の人手不足が顕在化していますが、とりわけ介護従事者の人材不足は深刻です。
多くの介護事業所では、人材の確保に苦労し、人材紹介会社に頼らざるを得ない状況にあり、多額の紹介料が経営を大きく圧迫する要因となり、場合によっては事業を継続することが難しい事業所もあります。そうして確保した介護人材の定着率も低く、そうなれば市民が必要とする介護サービスを利用できないという悪循環に陥ることにもなりかねません。横浜市として介護人材確保に向けたサービス事業者への支援を行うべきと考えます。《地域医療介護総合確保基金の活用における課題》
施設だけではなく、在宅サービスの事業所も人手不足は深刻です。2025年には、横浜市内で約8,500人の介護人材不足が見込まれ、単純計算でも毎年1000人以上の人材を確保しなければなりません。市長には、人材確保に向けた強い決意と実行力を求めます。《介護人材確保に向けたサービス事業者への支援》《介護人材不足の解決への市長の決意》
健康横浜21では、健康寿命延伸の取組が進められています。その中でも、心身の機能低下が進み虚弱な状態(フレイル)とならないよう、十分な栄養をとることを可能とする「歯科口腔機能の維持」が大切といわれています。《高齢期における歯科口腔保健に関する課題》
健康寿命の延伸と生活の質の向上をめざすうえで歯科口腔保険の充実はきわめて重要であり、よこはま自民党では、歯科口腔保健条例の制定の準備をすすめています。歯科口腔保健の現状を紹介しますと、「かかりつけ歯科医」による受診行動は、小学校で80%、中学校で50%、高校で30%と年々低下しており、年齢が進むにつれ1人あたりのむし歯の数は増えています。また、むし歯と並ぶ二大疾患の1つである歯周病は、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、早産、肺炎等への悪影響が問題となっています。《子どもから高齢者までの歯科口腔保健の切れ目のない取組の推進》
横浜市の誤嚥性肺炎による年間医療費は130億円、そのうち口腔ケアを行うことで4割の方々が誤嚥性肺炎予防に効果があったといわれています。すなわち52億円の医療費削減効果が出たのです。医療費適正化のためにも歯科口腔保健条例の制定が不可欠です。
これからの横浜の成長に必要なエンジンは『市民力・地域力』、『中小企業の技術力・競争力』、そして『MICE・企業誘致』であると考えます。
《横浜の成長エンジン》
市内経済の持続可能な成長を実現するためには、国内外から様々な企業を誘致することが必要であり、国内外の都市との都市間競争に勝ち抜く必要があります。2020年まで、東京では大規模な投資(東京オリンピック)が続き、東京への一極集中が進むことに大きな危機感を抱いています。横浜市が都市としての魅力や優位性を活かす戦略的な誘致活動を進めなければなりません。《横浜市の企業誘致の現状分析》
新中期計画では、企業誘致・立地施策により、4か年で260社の企業立地を進め、市内に立地した企業による雇用創出1万人を目標に設定していますが、従来と変わらない目標数値であり戦略的目標となっていません。未来の横浜につながる経済戦略が必要です。また、目標達成には適宜 適切な振り返りや効果検証が必要です。《企業誘致目標とそれを達成するための戦略》
横浜市では、庁内に『オープン・イノベーション推進本部』を設置し、官民データの活用や官民連携の取組を推進するなど先駆的な取組をしています。一方で、庁内だけでなく「ビジネスベース」でのオープン・イノベーション推進組織へのサポートも重要です。オープン・イノベーションを通じて、誘致企業が新たな技術の獲得や開発のスピードアップ、競争力強化などの事業成果を実感することが重要であり、新たなビジネスを創出できる環境整備が必要です。《I・TOP横浜、LIP横浜の評価》《ビジネスベースでのオープン・イノベーション強化のための、官民協働の場の必要性に関する市長見解》《MICEへの印象と評価》
近年、福岡、京都、神戸、名古屋などの大都市がMICEの取組みを強化し、国内のMICE誘致競争が激しくなっています。MICE参加者の増加は宿泊者の増加の他、観光消費額の増加につながります。1991年に開業したパシフィコ横浜は15年間国内1位を維持しています。会議場、展示場、ホテルなどが一体となったオールインワン施設に対する高い評価を得ています。《日本一のMICE施設、パシフィコ横浜の評価と課題》
2013年に発表されたパシフィコ横浜の経済波及効果は約870億円でした。2020年春に開業するパシフィコノースを加えると、これまで機会損失してきた展示場やコンベンション機能が格段に改善され、横浜のMICE機能が強化されるものと期待します。MICEで横浜を訪れる人々は研究やビジネスを目的としており、経済や産業の振興につなげていくことが重要です。
他都市をみても、東京都では産業労働局、大阪市では経済戦略局、京都市では産業観光局と、組織の名称は違えども、MICEは「経済や産業」の振興、促進を図る部署が所管しています。文化観光局は観光コンテンツの開発と振興に特化すべきであり、経済局が企業誘致や市内経済の成長に責任をもつ局としてMICE事業について所管すべきと思います。
また国際局の役割も重要です。NY 事務所を開設する国際局はMICE強化のための戦略拠点といえます。《国際局および海外事務所のMICE支援》
海外からMICEを目的に横浜を訪問する人々、特にインセンティブトラベルでは家族連れで横浜に来られるケースが少なくありません。このような方々が日中に横浜で楽しい時間を過ごせるような観光コンテンツを作ることによる経済効果が期待できます。
開発が進んでいるみなとみらい地区には、ぴあやケンコーポレーションによる大型の音楽用アリーナの建設が進んでおり、これらを活用することでも更なるMICE誘致につながります。このようにMICEの誘致効果は、充実した観光コンテンツがあればなおさらです。《MICE効果は観光コンテンツによって最大化されるとする意見への認識》
「東京にはない、横浜ならではの、どこにも負けない観光コンテンツ」を開発することが重要です。観光コンテンツの価値を高めることで長期滞在につながり、ひいては観光客の消費額が増えます。
横浜を拠点として、富士山や箱根などを訪問する広域ツーリズムや近隣都市連携で展開することも可能ではないでしょうか。横浜に長期滞在したいと思わせる「東京に負けない観光コンテンツ」をもつべきです。《横浜での長期滞在には「東京に負けない観光コンテンツ」が必要とする意見に対する見解》
今後の成長を推進するエンジンとしては、市内企業の99.6%を占める中小企業の存在が欠かせません。経営基盤が弱く、外的な影響を受けやすい中小企業を支え、その成長を支援していくべきです。《横浜の産業構造の現状や特徴と市内中小企業が抱える経営課題》《市内中小企業の生産性向上に向けた経営支援の状況》
横浜企業経営支援財団(IDEC横浜)は、個別相談やセミナー、専門家派遣など様々なメニューで中小企業を支えていますが、技術革新スピードの速い今日の競争環境では、IDEC横浜の果たす役割は十分ではありません。《市内中小企業の成長発展に向けたIDEC横浜が果たすべき役割》
IDEC横浜は、金沢振興センターなど多くの施設を保有しています。収支的にも厳しい経営状況のIDEC 横浜は、ハウジングコストの抑制など保有資産の売却など経営見直しを図るべきです。
また、市内の中小企業は、信頼できる経営支援や新しい技術ならびにビジネスモデルの支援を必要としています。そうしたニーズに応えることのできる人材の整備、機動力のある体制を再構築することが必要です。《中小企業支援へのさらなる注力に向けてIDEC横浜の課題》
市内経済を高めていくためには、新たなプレイヤーを増やすことも大切です。市内には新技術開発や新事業展開を目指す中小企業、ベンチャー企業、起業家の事業拠点としてインキュベーション施設があります。また、様々な事業を融合させる「コワーキング・スペース」も増えてきています。
緑区長津田にあります東工大横浜ベンチャープラザは、神奈川県、横浜市、東工大、中小企業基盤整備機構により大学発ベンチャーの起業化支援を行ってきていますが、平成19年の開設以来、40社が入居し現在は14社が入居しており、これまで26社の企業が巣立っているわけですが、株式上場している企業はなく、目に見える成果が挙がっているとは言えない状況です。
大学側は、学生に研究開発のフィールドが提供され、オープン・イノベーションの成果を感じていると思いますが、企業側はイノベーション成果が上がっていないことが課題です。本市がアクセラレーター、インキュベーター機能を発揮できるよう、オープン・イノベーション・マネジメントをすすめる優れた人材配置をしていないからだと考えます。有望なスタートアップ企業の支援に横浜市が強力に関与することが重要です。《スタートアップ企業支援策の現状と課題》
少子高齢化や労働力人口の減少といった社会課題を抱える中で、新たに起業したスタートアップ企業のビジネスモデルには、「社会課題解決型」が増えてきています。そういった企業を支援していく事が重要だと考えています。福岡市や大阪市では、起業・創業の支援に予算を多く確保し、大々的に創業しやすい街としてアピールしています。とりわけ、福岡市は中心部に大規模なスタートアップ企業支援拠点を設置し、スタートアップ企業に対する税制支援策を市独自に設けるなど、積極的な姿勢を前面に出して取組をすすめています。横浜が「スタートアップ企業が活動しやすい」街のイメージを広め、数多くの企業立地につながる戦略が必要です。
横浜経済のこれまでの牽引役は、何と言っても「港」です。厳しい都市間競争は「港」においても同様であり、いかに横浜港にコンテナ船、クルーズ船などの「船」を寄港させるかが重要です。横浜港は、我が国を代表する国際貿易港として大きなポテンシャルを有し、29年のコンテナ貨物量は、7年ぶりに増加に転じ、300万TEUに迫る勢いを取り戻しつつあり、横浜港が東アジアのハブポートとしての役割を改めて発揮し始めています。
これは、内航船で輸送され横浜で積み替えられる国際フィーダー貨物と、横浜が世界各地域への積替え拠点となる国際トランシップ貨物の大幅な増加が主な要因と聞いています。
横浜港の港勢拡大は、横浜経済を押し上げる重要な要素であるため、引き続き「航路・貨物の誘致を積極的に進めていくべき」と考えます。《横浜港の内航ネットワークの状況と今後の展開》
戦略港湾である横浜港が、背後圏に自動車関連をはじめ多くの企業が立地する東日本港湾(苫小牧、八戸等)と連携を強化することが経済成長を押し上げる、重要な施策です。協定を締結した港湾との連携策を、早急に具体化させると共に、是非他の港湾に対しても提携を働きかけるなど積極的な取組みが必要です。首都圏では、東京港に関東・東北方面への輸入貨物が多数滞留しています。この横浜港の取組が、東京港から横浜港へ航路・貨物の利用転換に繋がり、東日本広域にわたりサプライチェーンの効率化が図られる契機となることを期待します。《国際トランシップ貨物の現状と今後の貨物誘致策》
内航ネットワークの充実と国際トランシップの促進は、「貨物のある港に船が集まる」、「航路が充実している港に貨物が集まる」という好循環につながる横浜港の優位性を活かした戦略です。そのために、ハード・ソフト両面からしっかりと施策を展開していく必要があります。《コンテナ貨物取扱量拡大に向けた航路誘致の方向》横浜港の横浜経済における波及効果は約3割あり、さらなる港勢拡大は市民の所得の拡大や雇用創出に繋がります。また、市内経済の発展はもとより、横浜港は日本経済の発展にも大きな役割を果たすことが期待されています。国内外の海運動向や経済動向を見据え、世界における横浜港のプレゼンスを更に拡大することを期待します。