山本たかしの政務調査ニュース

横浜の市政課題を検証・提言!減災、社会保障、都市づくり

世界は急激な変化の潮流の中にあります。しかし、わが国の政治・経済・社会は、世界の変化に取り
残されようとしているのではないでしょうか。
 「当たり前の社会をつくる」をスローガンに、『市民生活を守り、つなぎ、創る』を目標に取り組んできていますが、皆様とあらためて市政課題を『共有』したいと思います。

ニーズが高まる「自助・共助」の減災対策

 9月1日は、防災の日です。2023年(令和5年)9月1日は、関東大震災が発生してから、ちょうど100年目の節目の年です。1923年(大正7年)同日、関東大震災が横浜を襲いました。地震により多くの建物が倒壊し、その後発生した火災により市街地の90%近くが焼失し33,543人が被災しました。神奈川県下の多くの都市が自力復興を余儀なくされたのと異なり、横浜市は、「帝都復興計画」に組み込まれ、政府直轄の事業と市が行う事業とをあわせて復興に取り組むこととなりました。震災復興では港湾設備の拡張や幹線道路の整備、計画的な街路配置に加え、山下公園などの公園整備もなされました。
 横浜市は、その後、多くの大震災の教訓から、市民、事業者へ、防災活動の促進など「自助・共助」を推進しています。頻発化・激甚化する台風や大雨に備えて、風水害への「逃げ遅れゼロ」をめざします。また、2018年に発生した大阪府北部地震では、ブロック塀倒壊が原因で人命にかかわる被害が発生しました。これをうけ、市内全域で「コンクリートブロック塀の改善工事費の一部補助」を行うほか、地域火災の延焼を防止するため「狭あい道路拡幅整備事業」を行っています。さらに「緊急輸送道路沿道建築物の耐震化」や都市防災力の強化や情報通信ネットワークの信頼性向上の観点から「電線地中化」にも取り組んでいます。
 377万人の日本最大の都市に発展した横浜市の市民の6割は、マンションなどの「共同住宅」に住んでいます。そこで、「よこはま防災力向上マンション認定制度」をつくり、災害に強いマンションと住民による防災力向上に努めています。
 今後、首都直下地震や南海トラフ地震など、いつ起きるかわからない大地震に備え、消防団、家庭防災員、防災ライセンスリーダーなど地域の自助・共助の取組がますます重要となってきます。

人口減少社会に備えて、大胆な財政出動を

 日本最大の都市横浜は、戦後復興と高度経済成長に支えられ、人口を増やし続けてきました。しかし2019年をピークに人口減少時代に入り、2065年には300万人にまで減少する見通しです。急速にすすむ超高齢社会における社会保障経費の増大や都市基盤の更新需要など課題は山積しており、人口減少社会は横浜の活力を失わせます。
 人口減少に歯止めをかけ、横浜に持続可能な成長をもたらす都市戦略が必要です。 特に「全世代型社会保障」の実現に向け、2025年を目標とする地域包括ケアの完成は重要です。
 2014年から、消費税増税を活用した「地域医療介護総合確保基金」を都道府県に設置し、地域医療体制の充実(在宅医療の充実、介護施設整備、医療従事者の確保、介護従事者の確保、勤務医の超過勤務改善など)に取り組んできました。高齢社会の回復期や慢性期病床の確保が必要であり、医療需要を踏まえた医療の提供体制確保は、喫緊の課題となっています。しかし、病床機能の確保と連携体制、在宅医療の充実、医療従事者の確保・育成の必要性を認識しますが、出口の見えないコロナ禍にあって、医療現場はまさに危機的状況といえます。
 少子化対策も待ったなしです。わが国の1971年当時の出生者数は200万人(合計特殊出生率は2.14人)でしたが、2021年では81万人(合計特殊出生率は1.31人)となっており、少子化は深刻な社会問題となっています。出生者数減少の原因には、「晩婚化」や「経済的自立」、「子育て環境」などが理由としてあげられています。
 横浜市では、将来人口の社会的増をもたらすため、“企業や人を呼び込む政策”の実現が中期計画の最優先事項として盛り込んでいますが、幼児教育、保育の無償化や大学教育の無償化、出産費用の無償化には国費の投入が不可欠です。加えて、中学校3年生までの小児医療費助成は、現在、自治体間競争という不毛な消耗戦となっており、これについても国の支援を要望するところです。
少子化・人口減少の克服は、国としての「大きな挑戦」です。国民負担を求めない大胆な財政出動による「決断と実行」をすべきです。

貴重な都市インフラである小中学校の有効活用

 横浜市内の公立小中学校は2015度に耐震化工事を完了しましたが、1960年代から70年代にかけて集中的に整備した学校の長寿命化や建替が必要となっています。しかし、この建替えには莫大な財源を必要としています。1981年度以前に建設された小学校274校と中学校111校、合計385校を対象とした場合、築70年に達する2051年までを30年間の事業費は優に1兆円と超えると試算されています。また、学校の建替えは、脱炭素化に向けた「省エネ・創エネ化」を基本としつつ、少子化に伴う「学校統合化」や地域の公共施設との「合築化・複合化」なども検討要素となるため、複数の部局(教育委員会、市民局、健康福祉局、都市整備局、環境創造局など)の調整が必要となるため、建替え方針の決定は容易なことではありません。しかし、時代の要請に応えスピーデイに建替えをすすめるためにも、学校建替えに関しては、政策局に軸とした一元的な統括組織をつくり、決定権限を持たせるべきと考えます。市内の小中学校は、地域に残された貴重なインフラです。この有効活用こそ、まさに少子高齢社会の横浜の未来を創るものであると確信します。