山本たかしの政務調査ニュース

総合審査(その2)脱炭素化の挑戦とセーフティネット住宅

脱炭素化の挑戦とセーフティネット住宅

 令和4年第1回市会定例会(予算議会)が終わりました。山中市長による初めての予算編成による令和4年度予算案が可決しました。私は、この予算議会で市政の重要課題について質問をしましたので、その質問(総合審査)について、3回に分けてご報告します。

7.ゼロカーボンヨコハマ

 2030年温室効果ガス削減50%の工程をどのように考えているのか、市長に確認しました。
 目標達成に向けた取組の1つとして、国の「脱炭素先行地域」に、みなとみらい21地区を対象として応募しました。これは、みなとみらい21地区の36社の企業がこのプロジェクトに参加し、省エネに加えて、各社が太陽光パネル設置などの再生エネルギー電力を加えて、ゼロカーボンを達成するスキームです。
 この要件を満たすためには、再生可能エネルギーの導入が不可欠ですが、横浜市は、再エネポテンシャルが低く、容易ではありません。再エネポテンシャルとは、再生エネルギー電力を生み出す能力を指します。そこで、脱炭素先行地域における再生可能エネルギーの導入について確認しました。
 地球規模の課題である温暖化対策には、東北13市町村との連携を始めとする国内連携はもとより、海外諸都市との連携も重要です。
 横浜市は、公民連携による国際技術協力Y-PORT事業において、アジア諸都市との都市間協力を進めています。
 脱炭素化は各都市共通の課題であり、横浜市は国際社会からも期待されています。市内には、高い技術力を持っている企業が多数あり、脱炭素化を通じたアジアへの貢献を市内企業の活躍の場にも繋げる可能性があるのではないでしょうか。

8.横浜臨海部脱炭素イノベーション戦略

 横浜臨海部脱炭素イノベーション戦略についてですが、横浜港が令和2年度に国から選定されているカーボンニュートラルポートは、国際物流の結節点、産業拠点である港湾において、水素等の大量輸入、利用等を図るとともに、港湾機能の高度化、臨海部産業との連携等を通じて温室効果ガスの排出を港、つまり臨港地区全体としてゼロにするものです。
隣接する川崎市には、古くからコンビナートが集積されており、製鉄所、化学工場等の生産過程で発生する水素が利用されてきた背景を踏まえ、『川崎水素戦略』を策定し、水素社会の実現に向けた検討が進んでいます。
 横浜港では公共埠頭や様々な事業所で活動が行われており、多くの民間事業者等と連携しスピード感を持って、カーボンニュートラルポートの形成を進める必要があります。
 カーボンニュートラルポートの形成が、臨港地区に立地する多くの民間事業者にとって新たなビジネスチャンスとなるよう、港湾局が取組を主導的に進めていかなければなりません。今後、改訂する港湾計画にしっかりと反映させていくべきです。
 横浜臨海部には物流以外にも、エネルギー産業や生産拠点・研究開発拠点といった多くの機能が集積しており、脱炭素化に向けては川崎に引けを取らない高いポテンシャルを有していると感じます。

9.森林環境譲与税の活用スキーム

 森林環境譲与税は、地方山間部における森林整備や、都市部における国産木材の利用促進などを主な目的として国から自治体に配分されており、市民の皆様に対しては、森林環境税として、令和6年度から一人年1,000円の課税が始まります。令和5年度までの住民税における復興特別税と同額ですので、新たな負担増にはなりませんが、改めて、活用方法を確認しました。
 横浜市では、都市部の役割を担い、森林環境譲与税を学校建替事業に充当することとしています。子どもたちが木材に触れられる環境を整えることは、教育的な観点からも素晴らしいことです。一方で、森林環境譲与税の活用先を、学校建替事業以外にも広げることで、より多くの市民が木材に触れることができ、目的の一つである木材利用の普及啓発につながると考えます。

10.建築物の木材利用の促進

 昨年、木材利用促進法が改正され、横浜市も令和4年度に方針を策定し、市内の建築物における木造化・木質化の普及に取組んでいきます。大都市としての役割や現状の課題を踏まえ、事業者に木材利用の意義をご理解いただくことが重要です。
 横浜市中区では、大手ゼネコンの大林組が日本初となる11階建ての木造建築物を建設しています。ここでは、独自に研 究・開発した燃えにくい木材など、様々なノウハウが詰め込まれていると聞いています。
 大林組など国内の大手ゼネコンは、高層木造建築の技術蓄積がされている一方で市内建設事業者には、技術蓄積が及ばないことから、木材建設需要への対応力がありません。
 大手ゼネコンから市内の建設関係者が学ぶ機会を設け、技術力の裾野を広めていくことを要望しました。木材のメリットが、建築主となる事業者や、中小の建設企業にも普及していかなければ、木材利用の促進にはつながっていきません。特に建設コストが重要な鍵を握っています。
 したがって、木材業界における生産・製材・加工、流通、建設のなどの実情や課題を把握し、産地や製材・加工の工場を有する自治体間協定による連携により、木材利用の普及策や支援策を戦略的に進めていただくことを要望しました。

11.市営住宅の建替えと市有地活用

 平成30年度に策定された「市営住宅の再生に関する基本的な考え方」で、今後30年かけて約14,000戸の市営住宅を建替えや大規模改修といった団地再生を進めていくこととなっています。
 市営住宅用地は約200ヘクタールあり、市民の貴重な財産です。建替えに当たっては、最大限有効活用していくべきです。そこで、磯子区の洋光台住宅や、港南区の野庭住宅など大規模な市営住宅の建替えでは、容積率や高さなどの規制を緩和する制度を活用し、建物の集約化を進めることで、大きな余剰土地を生み出すことが可能です。そして、建物の集約化により生み出された余剰地を売却し、市の収入を確保すべきと提言しました。さらに、余剰地を売却し、その収入を市営住宅建替えの費用に充てれば、さらに円滑に事業を推進できます。また、単に売却するだけではなく、土地活用を通じて市政推進に貢献していくことを要望し、土地売却による財源確保や脱炭素化などの施策との連動の可能性について前向きな答弁をいただきました。

12.セーフティネット住宅の充実

 生活をしていく上では「衣・食・住」の3つが必要ですが、そのうち“住まい”は最も重要なものであり、住まいの確保にお困りの方への支援がより一層求められています。本市では、民間賃貸住宅の空き室を活用した住宅セーフティネット制度を推進しており、入居を拒まない住宅として登録するセーフティネット住宅や、一部の要件を満たす住宅に対して家賃等の補助を行う、家賃補助付きセーフティネット住宅を実施しています。4年度予算では、これらの事業の予算が前度予算より減額されています。
 横浜市は、家賃等の補助に積極的に取り組んでいる全国でも数少ない自治体ですが、すぐに入居できる住戸は少ないのが現状です。住まいの確保にお困りの方が安心して住まいを確保するためには、すぐに入居できる住戸や家賃補助が受けられる住戸を増やしていくことが重要であり、そのためには賃貸住宅のオーナーや不動産事業者の方々の協力は欠かせません。これまで月額8万円の家賃補助(家賃補助総額480万円)だったものが、令和4年度から利用者の選択で、月額4万円から8万円の範囲で家賃補助額の選択ができるようになりました。例えば月額4万円の家賃補助額を選択をすれば、1年間48万円、最長10年間はセーフティネット住宅に住み続けることができるようになりました。また、UR 都市機構の協力で、空き室もセーフティネット住宅として利用可能となりました。
 今後更にセーフティネット住宅の需要が拡大していくことは間違いなく、賃貸住宅のオーナー等と連携し、より一層充実させていく必要があります。

13.地震対策

 マグニチュード7クラスの首都直下地震は、30年以内に約70%の確率で発生するという予測もあります。
 大規模な自然災害への対応として、本市は、平成31年4月に、災害救助法の救助実施市の指定を受けました。また、昨年12月に、ヒラオカ石油株式会社様と、「災害時の燃料確保に関する協定」を締結しています。これにより、本市が被災した際には、被災地外からタンクローリーで燃料を運搬し、市の施設等へ直接給油していただけるようになりました。
 災害時に、迅速・確実に対応するためには、この協定の取組のような、有事を想定した、平時からの備えが非常に重要です。

予算議会は、上程された予算案は、すべて可決され、3月23日に閉会しましたが課題も見えてきました。財政運営の厳しさを市民も理解し、『危機感』を共有し共に乗り越えなければなりません。これまで培ってきた『市民力』『地域力』を発揮する時です。