山本たかしの政務調査ニュース

令和4年横浜市会第1回定例会

新生「横浜」のIRに代わる「成長」とは

 1月31日から始まった令和4年横浜市会第1回定例会(予算議会)は、昨年8月に新市長となった山中竹春市長が初めて編成する予算案であり、大いに注目します。
 山中市長は市長就任後、即刻、IR推進を撤回したことで、市民からの評価は高い一方で、少子高齢化、人口減少社会に直面する横浜の課題(例えば、個人市民税に依存した税収構造、恒常的な収支不足、社会福祉コストの増加、老朽化した社会インフラの更新コスト負担増など)を解決できる施策としての国の観光政策であるIRを放棄したため、新たな財源確保策を生み出す必要があります。
 新年度予算案は、一般会計1兆9,700億円、特別会計1兆2,500億円、公営企業会計5,800億円、総計で3兆8,100億円となっており、前年比マイナス3%と絞り込んだ予算となっています。また、義務的経費は、1兆1,400億円(4%増)と一般会計の58%と硬直的な財政状況となっています。このようなきわめて厳しい財政状況の中、令和4年度予算案編成にあたって山中市長が最も腐心したことは何だったか、議会審議の中で確認していきます。
 また、昨年の市長選での市長公約『3つのゼロ』(75歳以上の敬老パスの無償化、出産費用の無償化、中学3年までの小児医療費無償化)が、今回予算化されていません。その真意についても確認しなければなりません。人口の自然減に歯止めをかけるうえで、社会増を図ることは重要です。そのための政策として『3つのゼロ』を公約としているならば、『3つのゼロ』実現に要する将来のコスト試算や意図する人口動態予測、雇用労働予測、税収見通し等、説明が必要です。必要な投資は実行しなければなりませんが、留意すべきは、福祉政策は、『公平性、平等性、納得性』の視点で、都市経営は、『戦略性、計画性、事業性』の視点が必要です。

 山中市長のはじめての予算編成にあたっての市政ビジョンを期待します。

≪予算議会のポイント≫

水素のサプライチェーン構築における横浜の戦略
大胆な住宅政策による良質の住宅ストックの確保
観光MICEのエンジン(横浜DMO)の組織化
子供の未来への投資戦略ビジョン

2030年ゼロカーボンよこはまへの条件

―水素エネルギーへの置換に向けた横浜市の挑戦―

 昨年11月に、横浜市はENEOS株式会社との水素サプライチェーン構築に向けた連携協定を締結しました。カーボンニュートラルポート(CNP)の形成をはじめとする臨海部の脱炭素化を目指す横浜市は、パイプラインをはじめとする水素供給インフラ整備に向けた検討に取り組み、臨海部において水素の輸入、貯蔵、供給、利用を促進するためのインフラ整備、および、水素供給・利用を推進していきます。ENEOSは、横浜市に根岸製油所、横浜製油所が立地するほか、市内には6箇所の水素ステーションを展開しており、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業である「東京湾岸エリアにおけるCO2フリー水素供給モデルに関する調査」を受託し、川崎市と川崎臨海部における共同調査を実施しています。
川崎市は既に9年前の2013年から産官学の「川崎臨海部水素ネットワーク協議会」を設置し、2015年には、「水素社会実現に向けた川崎水素戦略」を策定し、カーボンニュートラルコンビナートの構築と環境負荷の低い水素エネルギーの供給拠点形成を目指しています。

 横浜市は、水素の一大消費地としての大きなポテンシャルがあります。早急に、「横浜市の水素戦略(仮題―横浜市における水素活用によるゼロカーボンシティ横浜戦略)」を策定し、行政・市民・事業者に明確な目標を提示すべきと考えます。
 また、横浜市では、2050年ゼロカーボンヨコハマ宣言を受け、「横浜市脱炭素社会の形成を推進する条例」をつくりました。
横浜市が2013年度比-50%と温室効果ガス削減という高い目標を掲げる以上、温暖化対策統括本部の強力な指導力が問われています。また、横浜商工会議所などの市内経済界との強力な連携が必要です。

「住宅ストック確保」に大胆な発想転換を

 横浜市は、「良質な住宅の確保」をめざし、住宅セーフティネットの構築や総合的空き家対策、持続可能な住宅地・住環境の形成などに取り組んできました。しかし、コロナを契機としたワーク&ライフスタイルの変化や頻発・激甚化する自然災害への備え、脱炭素社会における技術イノベーション加速、高経年化したマンションの維持管理や建替え問題など、多くの課題が山積してきていることから、10年後を視野においた新たな『横浜市住生活基本計画』をまとめることとしました。横浜市は、1960年代から70年代の高度経済成長期に、無秩序な住宅開発による「都市のスプロール化」を引き起こしました。それを抑制する手段として、市独自の住宅開発の規制や市域の4分の1の市街化調整区域の指定、市街化区域40%に及ぶ第1種住宅専用地域の指定、国内最多の建築協定認可等、さまざまな規制によって緑豊かな住環境を形成することができました。このように、市内における良質な住環境が守られてきた反面、近年の社会環境の変化は、「住宅ストック確保」を困難にしています。今後、変化に先取りした大胆な政策が必要であり、「住宅ストック確保」に向け住宅政策審議会で提言いたしました。

  1. 市営住宅の土地売却による資金調達と民間デベロッパーによる市営住宅建替の促進
  2. 市営住宅への市街地環境設計制度を活用した高さや容積率の緩和
  3. 市営住宅への脱炭素化技術やノウハウの導入
  4. 市街化調整区域を市街化区域へ計画的編入

日本の魅力を発信する横浜DMO

 令和4年度予算案には、横浜市観光MICE戦略の策定と戦略を実行する組織体制として『観光地域づくり法人(DMO)』設立に向けた検討があげられました。具体的には、横浜市の観光MICE戦略を令和5年3月に策定予定となっています。 『ようやく策定にまでこぎつけたか!』というのが率直な感想です。
 本市では、経済局から文化観光局が分離独立したことを機に、都市の成長と集客力向上の面で世界的な都市間競争が激化する中で、横浜市のコンベンション機能を強化した国際交流都市として、平成23年7月に「横浜MICE 機能強化検討委員会」が設置され、翌平成24年3月に、MICEの意義ならびに取り組むべき中期的MICE戦略の方向性等についてまとめてきた経緯があります。それから10年、ようやく2022年度予算案に戦略策定の時期が明記されました。報告書である『国際競争力あるMICE拠点都市の確立を目指して―横浜市MICE機能強化に向けての提言書』の巻末に、「MICE機能強化は横浜のみならず日本の成長にとっても重要であり、グローバル競争においてはスピードが求められる。」と結論づけられています。
 都市間競争は激化の一途をたどっており、横浜市が国際観光MICE都市として日本の魅力発信をする上で、何が重要か、予算議会の中で議論をすすめていきたいと考えます。

≪ 提言 ≫

  1. アフターコロナ時代のインバウンド回復に向け、早急な『横浜DMO』の体制を構築すべきであり、中心的役割を担うのが、公益財団法人横浜観光コンベンションビューロー(YCVB)と位置づけ、YCVB の所管する事業を見直す。また、横浜の観光MICE のトップセールスを担う人材配置と経営資源の強化を図る。
  2. 神奈川県内にとどまらず、神奈川県外の市町村の魅力を発掘し、横浜のインバウンド客を地方へ送出する機能を有する「地方創生事業」を政策化する。
  3. FIT(Foreign Independent Tour)の増加に対応するマイクロツーリズムの魅力を発信する。
  4. 消費ニーズが『モノ消費からコト消費へ』へ変化している現代では、観光ニーズも体験型ツアーに変化している。インバウンド客が魅力を感じる「コト消費」には、日本に文化、芸術、祭礼などがあり、地方の市町村と連携した体験型ツアーを企画することが求められているため多様な人材の確保と育成を図るべきだ。

津南プロジェクトから(地方創生の取組)

津南プロジェクト (新潟県南魚沼郡津南町)