山本たかしの政務調査ニュース

緊急提言 まちの安全を脅かす「管理不全空き家」

  1. 横浜市の住宅事情
  2. 横浜市内の「空き家」の現状
  3. 「管理不全空き家」が増加する理由
  4. 空き家対策特別措置法
  5. 緊急提言

1.横浜市の住宅事情

 日本は、戦後、戦災による住宅の焼失で420万戸にものぼる住宅が不足し、横浜も例外ではありませんでした。昭和40年代に入ると、横浜は東京のベッドタウンとして人口増加や世帯の細分化が進み、住宅不足は一層深刻化しました。さらに、人口急増によるゴミ・公害問題や、無秩序な乱開発による郊外のスプロール化など、高度経済成長の弊害ともいえる問題が顕在化していました。 そうした中、横浜市は、10年間で約5800戸の分譲住宅を供給します。昭和60年代になると、日本はバブル景気に突入し、急激な景気上昇は、地価の高騰を招き、持家の取得を断念する世帯が増加します。横浜市は、賃貸住宅需要が増加し、賃貸住宅供給という新たな事業に参画しました。平成になり、少子高齢化・人口減少社会が加速する中、供給過剰となった「空き家問題」が社会問題化しました。

2.横浜市内の「空き家」の現状

 横浜市の空き家は、別荘あるいは普段の生活実態のない「二次住宅が2,660戸」、「賃貸住宅が112,330戸」、「売却用住宅が10,460戸」、「その他の住宅が52,590戸」となっています。賃貸住宅は、もともと人に貸すための用途ですから多いのは当然なのかもしれません。また、空き家のうち、腐朽・破損のある住宅は35,830戸あり、空き家全体の20.1%を占めています。

ところで、「空き家」はなぜ問題なのでしょうかまずは、庭木や雑草がおい茂り庭が荒れると、日当たりが悪くなり、蚊やハチ・ネズミなどの害虫等が発生する原因になります。また、建物か傷むことで、屋根瓦が落下したり、雨どいが外れる可能性が高まり、危険です。空き家は人の目が届かないため、不法にゴミを捨てられたり、不審者が侵入しやすい状況を作りだします。近隣に住む住民にとっても、こうした空き家が増え続ければ、最後には街はスラム化し、治安にも影響していくことになります。そのため、空き家を放置しないような対策が必要です。 横浜市は、空き家等の適切な管理を義務化するなど、令和3年3月5日に「横浜市空き家等に係る適切な管理、措置等に関する条例」(以下、「空き家条例」)を制定し、令和3年8月1日に施行しました。

≪空き家条例のポイント≫

  1. 空き家等の所有者による適切な管理の義務
  2. 危険を周知するための標識の設置
  3. 行政による応急的危険回避措置

3.「管理不全空き家」が増加する理由

 地方税法の「固定資産税の課税標準の特例」が管理不全空き家が増える理由です。「固定資産税の課標準の特例」とは、住宅が現存している土地に対して“200㎡までの土地で評価額の「6分の1」に、200㎡を超える土地で「3分の1」に評価額を減じて課税標準額を決められることです。

この特例は、『住宅用地に現存している住宅があること』が条件となっているため、危険で、衛生上良くなく、誰も住まずに放置してある空き家でも、建物があれば適用されます。解体して更地にしてしまえば特例措置の対象外となるため、建物を解体しない「管理不全の空き家」が増加しているのです。

4.空き家対策特別措置法

 国において、空き家が増える問題を解決するため、初めての国策、「空き家対策特別措置法」は平成27年5月に完全施行しました。「特定空き家」に係る土地には、固定資産税及び都市計画税の特例措置の対象から除外することとしたのです。

「特定空き家」の指定は、市町村が行います。しかし、一向に「特定空き家」に指定が進みません。そこで市民生活に大きなリスクを伴う「空き家対策」をスピード感をもって取り組むことにより、安全な街、住み続けたい街の実現が可能です。

「特定空き家」を指定する意義や「特定空き家」のリスク回避への責任が問われます。

5.緊急提言

  1. 「特定空き家」の改善・除却の目的は、『良好かつ安全な住宅環境を保全する』ことにある。
  2. 「特定空き家」指定においては、一定要件を満たしていれば、無条件で「特定空き家」と指定し、そうでないとする立証責任は所有者側が負う。
  3. 「特定空き家」の所有者は、改善・除却を速やかに行う義務があり、応じない場合は、横浜市が代執行を行う。
  4. 「特定空き家」の指定は、第三者である、「土地家屋調査士に委ね、指定には、外観および近隣住民の声などを尊重する。