『横浜市子ども子育て支援新制度』考察横浜市会議員 山本たかし(自民党)

少子化がすすむ中で未来の横浜を担う子供・若者政策の充実が望まれています。一方で、「子どもの貧困」は、373万大都市横浜にとっても喫緊の課題です。今回は平成27年4月からはじまった「横浜市子ども子育て支援新制度」に基づく新規事業「子どもの居場所づくりサポートモデル事業」についてレポートします。
横浜市子ども・子育て支援事業計画「概要版リーフレット」(全16ページ) (PDF形式 3.6MB)

1.子ども食堂

全国的にも今、話題となっている「子ども食堂」について取り上げます。
貧困家庭の子供たちが満足に食事を摂ることができない状況下、地域が見守りや食事を提供するなどして、子どもの居場所を提供する活動が注目をあつめています。平成29年度は磯子区でも区社会福祉協議会が中心に「子ども食堂」を運営するモデル事業がスタートします。
「子ども食堂って何?」という方々も多い中、「子ども食堂」のことを広く多くの子どもや地域の方に知ってもらい参加してもらうことが、困難を抱える子どもたちに社会が気づく第一歩となります。「子ども食堂」に来ると、将来がイメージできる身近なロールモデルに会うことができます。子どもにとっての魅力が高まれば、子ども食堂に参加する子どもはさらに増えていくでしょう。食事の提供だけでなく、子どもにとって魅力的な場としていく工夫が必要です。
「子ども食堂」の継続的な活動に必要なものとして、“食材の確保”があります。横浜市内の「子ども食堂」では、近所の商店街や農家と連携し食材を確保している例が複数あります。地域特性を生かし、企業や団体などとのネットワークを活用し、社会全体で子どもの育ちを支えていくことは大変意味のあることです。
また、資金面での支援も重要です。国では安部首相のリーダーシップの下、「子供の未来応援基金」が立ち上げられ、企業や団体からの寄附を活用しNPO等による子どものための草の根の活動を支援しています。横浜市内でも平成28年度から3つの団体がこの助成金を受けて事業を行っています。
現在市内39か所の「子ども食堂」に対して、企業等民間資金を活用した仕組みづくりや事業の継続性を担保する施策のきめ細かな対応が必要ではないでしょうか。横浜市の積極的なかかわりを期待します。
横浜こども食堂ネットワーク準備会

2.地域ユースプラザ事業

横浜市の困難を抱える若者の支援として、「青少年相談センター」、「地域ユースプラザ」、「若者サポートステーション」の3つの機関が段階的かつ切れ目のない支援を行っています。特に「地域ユースプラザ」は市内4方面に整備されており、磯子区にも南部ユースプラザがあり、ひきこもりからの回復初期のまだ就労を目指すことが難しい若者への支援を行っています。平成29年度からは、ひきこもり等の困難を抱える若者の専門相談を行うため、地域ユースプラザから区役所に社会福祉士を派遣することになりました。
 地域ユースプラザの担い手であるNPO法人がノウハウを活かし若者支援を効果的に行っていくことが重要であり、そのためにも区役所との連携が重要です。また区役所での相談を受ける職員の確保や人材育成も同様に重要といえます。
 少子高齢化が進み労働人口が減少の一途をたどっている今こそ、若者にこれからの社会を支える担い手になってもらうことが非常に重要であり、一人でも多く若者に支援を届けることに地域ユースプラザの活動が大いに期待されます。
よこはま南部ユースプラザ

3.横浜型児童家庭支援センター

横浜型児童家庭支援センターは、養育に課題があり継続した支援が必要な家庭や子どもを対象として、専門的な相談や、日中・休日の預かりや宿泊を伴う預かりを行う子育て短期支援事業であり、虐待の未然防止、重篤化防止を担う重要な施設になっています。現在、横浜市内では9か所設置され10か所目も準備段階にあります。横浜市では、児童養護施設や母子生活支援施設の新設や改築に合わせ、横浜児童家庭支援センターを整備していますが、今後は子どもの人口が多い地域や在宅支援のニーズが高い地域を優先するなど、メリハリをつけた整備が求められます。地域での親の養育力の低下を理由に安定した生活を送ることが難しい家庭が増え虐待対応件数も年々増加しています。29年度は新たに3ヶ所整備しますが、31年度末までに全ての区に設置することを目標に一層の整備拡充に取り組んでいただきたいと思います。

4.地域療育センター

地域療育センターは、障害の早期発見と早期療育のシステムを整備することを目的に、昭和60年、磯子区に第1号施設となる「南部地域療育センター」が開所されました。現在では市内8か所に整備され、区福祉保健センターが実施する乳幼児健診と連携して本市の障害児療育の中心的な役割を担っています。
地域療育センターでは、ここ数年増加する利用児童への対応として、相談員の増員など体制の強化を図っており、29年度予算では、東部地域療育センターに新たな相談場所を設置することとしています。東部地域療育センターが所管する鶴見区、神奈川区は、いずれも人口が増加しており、増え続ける児童への対応にも苦労も多いとききます。
地域療育センター事業の創設から30年以上が経過し、障害のある児童への支援は、質、量ともに変わってきており、特に、17年に「発達障害者支援法」が施行されて以降、発達障害が広く知られるようになったことで、発達障害のある児童への支援が地域療育センターでの取組の大きな部分を占めるようになりました。
横浜市南部地域療育センター

5.地域における親子の居場所づくり

横浜市では、保育ニーズの高まりにより待機児童対策を進めていますが、一方で0~2歳の子どもの約7割は在宅で育てられています。今日、少子化や都市化が進み、小さな子どもがいる家庭が減ったことで、近所で子育ての仲間を作ったり、困りごとや悩みを気軽に相談したりすることが難しくなっています。そのために子育てに対する負担感や孤独感を感じる人が少なくありません。子育ての基本は家庭にありますが、家庭の養育力の低下とともに、地域においても支え合う力が落ちてきています。家庭の子育て力を高め、同時に地域や社会全体として子育てしやすい環境を作っていく必要があるといえます。横浜市では、子ども・子育て支援事業計画に沿って、親子がいつでも利用できる常設の親子の居場所づくりを進めており、31年度までに合計167か所まで増やす計画です。親子の居場所づくりは国においても推進している事業であり、27年度実績では、全国に約6,800か所整備されています。他の自治体では、保育所に併設されるような整備や運営の手法を取っていることが多くみられます。地域において親子の居場所を整備していくには、地域の理解と協力が不可欠です。磯子区では地域子育て支援拠点「いそピヨ」があり、また地域の方が中心となって運営している「親と子のつどいの広場」は4か所あります。今月中にもう1か所磯子区丸山に開所する予定です。
また、質的な充実の一つとして、28年1月から地域子育て支援拠点に配置された「横浜子育てパートナー」による相談があり、18区全てに配置され、子育て家庭からの様々な相談に対応しています。子育てパートナーのように地域の身近な場所で気軽に相談に乗ってくれる人がいれば、子育て家庭の悩みや困り感を軽減し、地域での孤立も防ぐことができるでしょう。29年度の予算案では、地域子育て支援拠点の補完施設である「拠点サテライト」に子育てパートナーを配置することが盛り込まれました。具体的には、港北区と鶴見区に配置されます。地域子育て支援拠点サテライトにも横浜子育てパートナーが配置されることで、より相談しやすくなることを期待します。
磯子区地域子育て支援拠点「いそピヨ」

6.小規模保育事業等

更なる人口減少社会の進展を考えると、どこまで保育所の整備をし続けるのか、これは直ちに答えが導き出せない難しい問題です。一方、子育ては家庭的な雰囲気の中で行われてきたものであり、子どもの保育という視点から考えると、小規模な建物の中で保育をすることを好む保護者の方もいるのではと思われます。認可保育所、小規模保育事業、それぞれ特徴があり、どちらが良い、悪いということではありませんが、保育の面からも、子どもの月齢が小さいうちは小規模な施設については魅力的なものだと考えられています。小規模保育事業のためにも、増加傾向にある戸建て空き家を積極的に活用していくよう要望します。
小規模保育事業と位置づけは異なりますが、国が主導している事業として昨年始まった「企業主導型保育事業」があります。従業員のための保育施設ですが、定員の一部に地域の児童を受け入れることが可能となります。この事業自体は始まったばかりですが、助成決定されたケースをみると、比較的小さい施設が多く小規模保育事業に近い保育環境が提供されるのではないかと期待します。企業にとっても、福利厚生を高めることで優秀な人材を集めるという利点があります。しかしながら、こうした事業は企業側に一定の社会コスト負担が生じることも事実であり、常に厳しい競争環境におかれている企業が企業主導型保育事業から撤退するというリスクも考慮しなければなりません。企業主導型保育事業は、企業にとって人材確保や離職防止につながる取組であり、待機児童対策のみならず、横浜市が進める企業誘致施策にも寄与するものと期待します。国内外に発信できるシンボリックな企業主導型保育事業所を望みます。

7.幼稚園の預かり保育事業

 昨今の経済状況の変化や、育児休業制度の充実などにより、仕事と子育てを両立する方が増えています。これが、共働き世帯の増加や、妊娠・出産をきっかけに退職する女性の減少、保育所入所希望者の増加となって表れてきています。その一方で、働きながら子どもを幼稚園に通わせたいと願う保護者のニーズをしっかりと受け止めているのが、幼稚園での預かり保育事業です。
この事業は、幼稚園や認定こども園の教育時間の前後に預かり保育を行うもので、働く保護者に代わり、朝7時30分から午後6時30分までお子さんを預かります。保護者が幼稚園選びをする際は、教育方針や教育内容を重要視するのはもちろんですが、預かり保育を実施しているかどうかも、検討要素の一つになっています。
たとえば、教育内容が気に入った園があっても、働く保護者にとっては預かり保育を実施していなければ入園を断念することにもなりかねない。子どもたちが園に通いやすいように、区や地域による偏りができるだけないよう、多くの園で実施してほしいと思います。預かり保育を実施するかどうかは、最終的には各幼稚園で判断するものですが、各園の理解と協力が得られるように、横浜市の積極的な展開が必要です。
関係団体である横浜市幼稚園協会にも協力を仰ぐことで、行政だけで対応するよりも、より効果的に取組を進められることを期待します。 また、0歳から2歳児までの保育を行う小規模保育事業を中心とした地域型保育事業を卒園した後の進級先を確保することにもつながるため、3歳から園児を受け入れる幼稚園は、まさに連携施設として大変有力といえます。
幼稚園での預かり保育は、入園後子どもの様子を見てから働き始めたい場合や保育所に入所する程ではない、いわゆる短い時間で働く場合にも利用しやすい事業です。また、仕事を辞めても園を辞めなくて良いなど、柔軟な対応ができるため、保護者の方々にとっても、大変心強い存在だといえるでしょう。

8.放課後キッズクラブ/放課後児童クラブ

横浜市では、小学校入学を機に放課後に子どもを預ける場所がなくなり、仕事と育児の両立が困難になる、いわゆる「小1の壁」を打破するため、留守家庭児童の放課後の居場所を充実する施策を進めています。『横浜市子ども・子育て支援事業計画』に基づき、31年度末までに全ての小学校において、「遊びの場」である『はまっ子ふれあいスクール』から、「遊びの場」と「生活の場」を兼ね備えた『放課後キッズクラブ』への転換を進めています。残り約150校の転換を順調に進めるため、また、各キッズクラブの質を高めていくためにも、地域立ち上げ型キッズクラブの充実ならびに一層の法人応募促進を要望します。
最後に、放課後児童クラブについては、耐震に係る移転費補助の拡充や職員の処遇改善に関する補助が新設されたことを大変評価するとともに、放課後児童クラブに対する環境改善にも積極的に行われるよう要望します。

≫神奈川県立こども医療センター視察へ