視察報告横浜自民党

安心の小児医療は地域医療ネットワークから
神奈川県立こども医療センター視察

神奈川県立こども医療センター視察|山本たかし少子高齢化がすすむ横浜市では、「子供の健康」を市政の重要課題の1つとしています。平成25年(2013年)度から平成29年(2017年)度までの5か年を計画期間とし、保健医療分野を中心とした施策を総合的に体系づけた中期的計画、「よこはま保健医療プラン2013」を策定し、その中で小児医療の充実に向けた施策を明記しています。 横浜市の小児医療(小児救急医療を含む)の現状は、乳児死亡率が全国平均2.3(※注)に対し、横浜2.7(※注)と若干高いものの、乳幼児死亡率ならびに小児死亡率は、0.63、0.26(※注)といずれも低い状況にあります。

  • ※注:出生1000人に対する割合を示しています。

しかしながら山積する小児医療にかかる課題克服のために、さらなる診療体制の充実が急務であり、横浜市では「小児科医を集約化することで、24時間365日小児科救急医療に対応する「小児救急拠点病院」の整備を平成13年度から開始し、現在、市内7病院が『小児救急拠点病院』として指定しています。
 このたびは、『小児がん拠点病院』に指定された『神奈川県立こども医療センター』を視察し、小児医療の現状と課題を調査してきました。安心の小児医療をめざし、新たな施策提言につなげてまいります。

  1. 小児医療にかかわる基礎データ 【平成23年度】

    • 横浜市の小児人口(15歳未満)
      • 0~14歳 483,380人 0~4歳157,037人
    • 乳児死亡の推移
      • 横浜市2.7人 全国2.3人
    • 新生児死亡の推移
      • 横浜市1.3人 全国1.1人
    • 横浜市乳幼児死亡
      • 死亡者90人 死亡率0.56(全国0.63)
    • 横浜市小児(15歳未満)死亡
      • 死亡者110人 死亡率0.22(全国0.26)
    • 小児救急拠点病院(7ヶ所)
      • 昭和大学横浜市北部病院(都筑区)
      • 横浜労災病院(港北区)
      • 済生会横浜市東部病院(鶴見区)
      • 市民病院(保土ヶ谷区)
      • みなと赤十字病院(中区)
      • 済生会横浜市南部病院(港南区)
      • 国立病院機構
        横浜医療センター(戸塚区)

小児医療の課題①不慮の事故(障害)

 新生児・乳児死亡率は、明治、大正、昭和初期から戦前までは高かったですが、戦後は大幅に減少しました。平成26年の乳児死亡率は、1000人の出生に対し2.1人となっており、その死亡原因は先天奇形、変形および染色体異常が第一位、周産期に特異的な呼吸障害及び心血管障害が第二位、乳幼児突然死症候群が第三位となっています。また別の調査で、5歳未満の乳児死亡率の国別比較では、日本は健康、教育、栄養状態のいずれも最高ランクで世界トップとなっています。
 世界のトップランクにある我が国の乳児死亡率ですが、1歳以上の子供の疾病別死因の上位に「不慮の事故(傷害)」があげられます。いわゆる、『子供への虐待』による乳児死亡が社会的な問題としてクローズアップされているのです。経済協力開発機構(OECD)加盟34か国中、我が国は9番目に子供の貧困率が高い国となっています。
 我が国のひとり親家庭は、母子世帯で124万世帯、父子世帯で22万世帯となっており、ひとり親世帯となった理由は8割が離婚によるものです。ひとり親家庭の平均年間就労収入は母子世帯で180万円、父子世帯で360万円で、貧困家庭における児童虐待は深刻な社会問題となりつつあります。児童虐待の増加は、児童相談所への相談対応件数(平成15年26560件→平成25年度73765件)にも顕著に表れており、過去10年間で3倍増となっています。 こうしたことから、優れた小児医療体制、すなわち中核病院小児科と地域小児科センター、地域小児科のネットワーク連携を確立するためには、救急外来で経験する子供の死を科学的に検証する「child death review 体制」を構築することが、虐待への防波堤となります。

小児医療の課題②慢性疾患

予防接種体制の充実により重症感染症患児が減少しています。細菌性髄膜炎、敗血症、細菌性肺炎、細菌性股関節炎などは確実に減少してきました。一方で、慢性疾患(障害)をもって思春期・成人期を迎える子供が増加しており、これらの子供や青年を如何にスムーズに成人に移行させるか、在宅医療の充実・社会からの支援体制の改善が必要です。

  1. 障害をもって成長し、成人に移行する患者の課題

    • 低出生体重児 : 肺機能障害、中枢神経障害、発達障害など
    • 小児がん経験者 : 晩期障害、二次がん
    • 重症先天性心疾患患者 : 心不全、不整脈、チアノーゼ腎症
    • 染色体異常症 : Down症における老化問題
    • 先天性代謝異常症 : フェニルケトン尿症における助成打切りによる中枢神経障害の発症
    • 長期の治療入院 : 社会性の形成が不十分、就労できない等の自信の形成困難
    • ますます必要とされる小児・青年の在宅医療支援施設であり、中間移行施設(在宅医療準備・支援施設)、医療依存児・者に支援センター、子供ホスピス、小児訪問看護ステーション、ひとり暮らしへのグループホームでの患者支援、学業・就労支援、学業・就労継続支援などの施設整備が不可欠です。

小児医療の課題③医師・NICU/PICU病床不足

小児救急拠点病院や開業医などの意見ならびに地域医療ビジョンに基づく課題を整理すると以下のことがわかってきました。

  1. 小児医療を担う医師不足
  2. 急性期の集中治療を担うNICU/PICUに長期に入院する乳幼児の 在宅医療への移行がすすまないことから生じるNICU/PICUの慢性的な病床不足
  3. 軽症にもかかわらず急性期病院を受診することによる急性期病床の不足
  4. 対策としては、小児医療体制整備のなかで、特に二次小児救急医療体制、高度小児専門医療の整備が急がれるとともに、一般住民、保護者への小児救急医療に対する普及啓発活動が重要です。

 

生活様式の変化や家庭環境の変化による育児に対する不安増大などから、小児救急医療ニーズは高まってくると予測されます。そうした育児不安の増大が入院救急医療機関(第二次小児医療機関)を訪れる患者が増えている現状ですが、そのうち9割以上は当日のうちに帰宅する軽症者であったり、救急搬送された小児患者についても全国で75%が軽症者といわれています。
参考にすべきは、小児救急電話相談事業(♯8000)、です。全県で実施されており、適切な相談のなかで救急医療機関でなくても適正な受診が可能である一次救急で十分効果を発揮します。横浜市では(♯7119 救急相談センター)があります。ご活用ください。

 

小児科医師の実態を知るデータとして、全国平均での病院における小児医師数3.6人があります。医師総数(平均)が25.1人であり、圧倒的に小児科医が不足している実態にあります。さらに6歳未満の時間外受診での救急受診が年間1000万人を超えており、1病院あたり1日平均8.26人の患者を時間外(夜間)に診療することになり、小児科医の負担(勤務時間、睡眠時間)は大変大きいと言わざるを得ません。 患者、医師、病院管理者それぞれが不満をもつこととなります。

  1. 患者 : 診療体制が不十分
  2. 医師 : 夜間・休日の外来診療当番が頻繁であるため疲弊してしまう。
  3. 病院管理者 : 夜間・休日診療は社会的な要請であるものの、患者数が少ないので赤字となる。

    医療資源の集約化 → 診療体制の充実が急務です。

小児医療の課題④小児がん・障害者(児)

小児がん対策や障害者(児)への医療提供、慢性疾患対応、小児在宅医療、移行期支援医療等の施設拡充が課題です。横浜市では、平成26年6月、議員提案による「横浜市がん撲滅対策推進条例」を制定しました。これをうけ、平成27年4月に新設された医療局が中心となって横浜市の医療政策を一体的かつ強力に推進していくこととなりました。そして小児がん対策には、次の4病院が「横浜市小児がん連携病院」に指定されました。

    • 神奈川県立病院機構
      神奈川県立こども医療センター
    • 南区六ッ川2-138-4
    • 小児専門病院
      厚労省小児がん拠点病院
    • 社会福祉法人恩賜財団済生会
      横浜市南部病院
    • 港南区港南台3-2-10
    • 神奈川県
      がん診療連携指定病院
    • 公立大学法人
      横浜市立大学付属病院
    • 金沢区福浦3-9
    • 厚労省地域
      がん診療連携拠点病院
    • 学校法人
      昭和大学藤が丘病院
    • 青葉区藤が丘1-30
    • -
       
  1. 小児がんとは

小児がんは、小児がかかるさまざまながんの総称です。主な小児がんは、白血病、脳腫瘍、神経芽種、悪性リンパ腫、腎腫瘍などです。白血病や脳腫瘍が割合として多い状況ですが、種類が多く、治療法もそれぞれに異なります。主な小児がんとしては白血病が約40%、脳腫瘍が約20%が占めます。血液のがんである白血病や悪性リンパ腫を除き大人ではまれなものばかりです。現在、小児がんは手術治療、薬物療法(抗がん剤治療)、放射線治療、造血剤細胞移植などを組み合わせて治療します。小児がんは発見が難しく、がんの増殖も速いのですが、成人のがんに比べて化学療法や放射線療法に対する効果が極めて高いのも特徴です。ここ数十年の医療の進歩で、現在では70%~80%が治るようになってきました。小児がんは、数が少なく種類が多いため症例の多い病院での治療が必要です。子供は発達途中のため、治療ならび合併症がその後、何年もたってから現れるケースがあります。(晩期合併症)晩期合併症には成長・発達、生殖機能、臓器機能、二次がんに関するものがありますので、治った後も年齢に応じた長期にわたるフォローアップが必要です。小児がんでは治癒後も、晩期合併症においてはチーム医療が、生活面や教育面では社会的なさまざまなサポートが必要とされます。

横浜市の医療機関

  1. 一次医療圏 : 初期救急を含む一般の小児医療は、一次医療圏とする。

    • 休日急患診療所(18区)
    • 横浜市南西部夜間急病センター
    • 横浜市夜間急病センター
    • 横浜市北部夜間急病センター
  2. 二次医療圏 : 専門医療及び入院、緊急手術等を要する小児救急医療は、 比較的高度で専門性の高い医療サービスを提供し、入院医療サービスの完結を目指す二次医療圏とする。

    • 横浜労災病院
    • 横浜市立市民病院
    • 済生会横浜市南部病院
    • 昭和大学横浜市北部病院
    • 済生会横浜市東部病院
    • 横浜市立みなと赤十字病院
    • 国立病院機構横浜医療センター
  3. 三次医療圏 : 高度な専門医療及び重篤な小児患者に対する救命医療は、高度で専門的な医療サービスを提供する三次医療圏とする。

    • 神奈川県立こども医療センター
    • 市立大学付属市民総合医療センター
    • 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院

小児科輪番病院

    • 北部
    • 大口東総合病院(神奈川)
      牧野記念病院(緑)
      鴨居病院(緑)
      昭和大学藤が丘病院(青葉)
    • 西部
    • けいゆう病院(西)
      聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院(旭)
      横浜旭中央総合病院(旭)
      戸塚共立第二病院(戸塚)
    • 南部

    • 康心会汐見台病院(磯子)


安心の横浜の小児医療には!

  1. 高度専門小児医療体制を二次医療圏において確保すること

    • 県を中心とした二次救急医療体制の確立と医療連携
    • 救急医療に提供可能なNICU・PICU 病床の確保
  2. 小児医療に従事する人的資源の充実を図られること

    • 一般小児医療を行う診療所ならびに医師の確保
    • 小児救急医療地域研修事業の強化
  3. 適正受診に関する普及啓発活動を推進されること

    • 不要不急な小児救急医療の抑制のための啓発
  4. 在宅医療支援病院に対する診療報酬改善

  5. 病院小児科の重点化・集約化(経済的誘導)

    • 時間外診療(選定療養)、小児入院医療管理料の改善

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